あんま話さない人
なあ、平島かおる
バッと後ろを振り向くと、聞き馴れない声の主はーーー
クラスであまり話したことがない女子だった
なんでも長いこと入院していたらしく、まだ輪に入れていない、浮いた女子だった
正直あまりかかわりがない自分に声をかけてきたことに驚いたが、
もしかしたら教室につくまで無視し続けているのもおかしいと思ってのことかもしれないと思い、
やあ、と言った、できるだけ相手と同じトーンで。
その入院女子は、あんたって、集中できない質でしょ、とズバリ。
さらに続けて、なんか、あんたってマンボウみたい。
え、いきなり何ーーー?!なんで俺そういうことになってんの、しかもどういうチョイス?図体が大きいって共通点があるのが妙に癪に障るぅ。あ、好きなこのこといじめちゃうタイプ?そういうこと?
なんでだよ、俺なんかしたか?と単刀直入に聞く。
面と向かって言ってみたらどういう気分になるのか試したかっただけ。
おまっ…マイペースすぎんだろぁぁああ
あ、そういえば、マンボウは適当だから、気にしないでね
もうこいつ嫌やわ。会話する気が失せた
わけではなかった。ここまで不思議な人はあまりいない。ここまでバカ正直な人もそうそういない。
あのさ、いつも教室の場所忘れちゃうんだよね。
あるある。
意外となんの内容もない話できるんだなあと思いつつ、エレベーターに載った。
中に人は居なかった。
10秒くらい二人きりは決まづいだろう、と思ってか、
今日はいい天気だね~といまさらながらに呟く不思議ちゃん。
と言いつつ茶番に乗る。
いい天気だね。
エレベーターでは空が見えないのになんで?と思った。
入院してた時は、窓からしか外が見れなかったんだよ。と言う。
何か言いかけて、エレベーターの
「4階につきました」というアナウンスにかき消された。
二人して教室に入る。この組み合わせを見られたくないなあと思いながら、足早に友達のところに行く。
ふと、あの子はなんでさっき、俺の心を見透かしたように答えたんだろう?と思ったが、席に着くとその些細な疑問は忘れていた。